公正取引委員会と中小企業庁が有識者を集めて設けた「企業取引研究会」が、適切な価格転嫁をサプライチェーン全体で定着させていくための取引環境を整備する観点から、優越的地位の濫用規制の在り方等について検討した報告書(案)をとりまとめました。
そのなかで、主要な改正から約20年が経ち、さまざまな課題が明らかになっている下請代金支払遅延等防止法(下請法)について、次のような見直し事項が提示されています。
(1)買いたたき規制の在り方
下請事業者からの価格協議の申出に応じないなど、一方的に下請代金を決定し、下請事業者の利益を不当に害する行為を規制する必要があるとしています。
(2)親事業者による代金の支払手段
紙の手形の使用を認めないことや、電子債権などその他金銭以外の支払手段については、支払期日までに下請代金の満額の現金との引換えが困難であるものは認めないことが必要であるとしています。
(3)物流に関する商慣習
発荷主と運送事業者の取引について、他の下請法の対象取引と同様のものと位置付けられるため、発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引の類型を新たに下請法の対象取引にすべきであるとしています。
(4)下請法の適用基準に関する論点
意図的に資本金を増減するなどの下請法逃れへの対応として、現行の資本金基準に加えて、従業員基準を設けることを打ち出しています。
具体的には、従業員数300人(製造委託等)または100人(役務提供委託等)の基準を軸に検討することが適当であるとしています。
さらに、「下請」という用語に対する国民の認識や、発注者と受注者が対等な立場で共存共栄を目指すという意識の高まりを踏まえると、取引適正化に向けた国民の意識改革をより一層推進させることも企図して、「下請」という用語を時代の情勢変化に沿った用語に改める必要があるとしています。
この報告書(案)を受け、政府は2025年通常国会に改正下請法の提出を目指しています。
出典・文責 ≫ 日本実業出版社・株式会社エヌ・ジェイ・ハイ・テック